バス転落事故と健康管理

大きなショックを日本中に与えたバス転落死亡事故のあとでも、
今日の新宿駅スノーボードを背負った若者が
たくさんいましたね。

もしバスにのってこれからスキー場に向かうとしたら、それはそれですごい勇気だな〜なんて思ったりしていました。

実は私も内科医として健康診断やバス、トラック、タクシーの運転手さんの健康管理に携わることがあります。

昨日のバスの転落死亡事故でも「また健康上の問題かな」と
思ったのは私だけではないと思います。


会社にもよりますがバスの運転手さんたちの勤務は厳しいのです。

運転したことないですけど、たぶん乗用車よりバスやトラックって運転疲れると思うんですよ

それに若い方だけならまだしも、50代でも夜勤がありますし、

業界全体に「気力と体力で乗り切れ!」

といった

古い考え方が蔓延しているように思います。

そういった環境の中で、
健康診断をしたとしても、突然の体調不良、意識がぼんやりしたり、意識がなくなったり、けいれん、強い胸の痛みや息苦しさ、四肢麻痺(手足がうごかなくなる、しびれる)などを起す可能性は0にはなりません。

もちろん健康診断をすることで、そういった可能性の或る人を
ピックアップして、勤務調整や通院を促すことは
最低限のルールになっています(道路運送法?だったかな)。

そうやって病気の予防しても、治療しても上記のような症状が出てしまうことは
ありえます。

それくらい、人間の体というのは不安定なものなのです。

自分の一生の中では頻繁に起こる事はないので、
普段自分がその状態になるなど
考えられないのも分かります。

ですが、それはあくまで「主観的」な話です。


残念ながら、そういった業界の方も含め
健康に関しては特に自分の主観が絶対だと思い込んで、
医師や看護師、保健師や上司の忠告を聞かない方がたくさんいます。
(この場合はもう、聞かない、というより、聞けないと言ったほうが正しいかもしれませんね)

子供の頃から健康で
むしろ健康だけが取り柄で
知的労働よりも肉体労働(この場合はバスの運転)を好む方の場合は特に
自らの健康に自信を持ってしまいがちです。

また、運転することでしか生計を立てられない方も多いようです。

それに体調不良で仕事を減らされるのでとても嫌がります。

彼らは病気になったから内勤で、というわけにはいかないのです。

そんな考えがあたりまえになっている方が多いことを
会社や雇用者も知る必要がありますよね。

これまで人類は誕生してからの500万年の間ずっとずーっと病気と戦ってきているわけですから、

自分の主観より、これまでの知の結集である医学にも
少しは気を配ってほしいものです。

これらは無意識に自分の主観をあたりまえに思ってしまう
観点の問題にあります。

観点の問題をクリアできる観術をぜひ
バス会社も取り入れて
安全な運行を実行してもらいたいですね。

なおみ

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